こちらの記事では、「多様性」「公平性」「包括性」を重視する組織づくりに向けた、「DE&Iコーチング」を紹介していきます。組織におけるDE&Iの課題やDE&Iコーチングの特徴や期待できる効果などをまとめました。
「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」とは、「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」を合わせた概念となっており、企業などが取り入れている「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」を発展させた考え方として注目されているものです。
このDE&Iを企業で推進することにより、年齢や性別、価値観などが異なる人材が集まり、さまざまな観点から意見を出し合えるため、イノベーションの創出につながる可能性があります。さらに「多様な人材を評価し、新たな価値を創出する革新的な企業」といったイメージを与えることになり、企業価値や顧客ロイヤリティーの向上に繋がります。加えて企業イメージも向上するという面もあり、DE&Iの推進によって優秀な人材が集まりやすくなるといったメリットもあります。
上記を踏まえると、「DE&Iコーチング」とは、多様性、公平性、包括性の3つの理念を踏まえ、組織や社員が心理的安全性を保ちながら自ら成長できるように支援を行っていくことを目的としたコーチング手法です。現在、働き方の多様化やグローバル化が進んでいく中で、固定的な組織文化や価値観からの脱却が求められており、それぞれが持つ視点や背景などを尊重する、新たな組織変革を促していくことができます。
企業において多様な人材の受け入れを行い、ひとりひとりが組織の一員として活躍するには、それぞれが安心して自己表現ができる環境であることが大切です。いくら人材を採用したとしても、本来の自分を隠しながら働かざるを得ない環境である場合には、組織における心理的安全性が保たれていない状態といえます。
心理的安全性の低い組織の場合、偏見や固定観念など「属性による壁」と、「意見を表明することへの不安」という2つの困難があります。具体的な例としては、新入社員が何かを思いついたとしても、「若いから」「新入社員だから」といった理由から発言を軽視されたり批判されたりするような環境の場合、非常に発言がしにくい組織になっているといえます。
このような点から、まずは組織における心理的安全性の状況について把握した上で、向上させるための取り組みを行っていくことが重要であるといえます。
DE&Iにおける公平性とは、「さまざまな情報や機会へのアクセスを、すべての人に公平に保証すること」を指しています。
組織における公平性を考えた場合には、すべての社員に対して公平な評価やキャリア機会が提供されることが重要であるといえます。もしこの公平性が保たれていない場合には、人材が活躍しきれない状況になります。
そればかりか、昇進や配置などにおいて公平な基準や機会が提供されていないと感じてしまった場合、その社員は仕事に対するモチベーションが低下したり、離職を選択したりする可能性が高くなってしまうといえます。
「インクルージョン」とは、日本語では「包括」「含有」「一体性」などの意味を持つ言葉ですが、ビジネスシーンにおいてはさまざまな人がそれぞれの個性を尊重され、その特性を活かしながら社会・組織の一員として属している状態を指します。性別や年齢、国籍、障がいの有無、価値観の違いなどにかかわらず、全員が意見を出し合って尊重されている環境はインクルージョンを実現しているといえます。
そのため、少数派の意見が黙殺されてしまうといったケースの場合には、インクルージョンが不十分といえる状態です。このような状況の場合、異なるバックグラウンドを持つ人々が孤立しやすくチームや組織が分断されてしまいやすいといった課題が生じることになります。
上記でも述べている通り、DE&Iにおいては「心理的安全性」が非常に重要なポイントになります。質問や相談、意見の表明、新しいアイデアを提案するなど、すべての言動に対して不安や恐怖心を持たずに発言できる環境を構築することが重要になってきます。
このような点から、DE&Iコーチングにおいては、ひとりひとりの社員が持つ価値観を尊重し、不安なく発言できる環境を促していく点が特徴のひとつといえます。
企業の中ですべての社員に対して公平な評価を行う、成長機会を提供するなど公平性を実現するための行動を促していく点もDE&Iコーチングの特徴といえます。
このようにDE&Iを推進するにあたっては、ひとりひとりの社員が能力を十分に発揮できる職場環境を整えていくことも重要なポイントとなってきます。さらにさまざまな人材の状況を考慮し、公正かつ公平なルールや制度を定めることも大切です。具体的な例としては、採用や昇進における選考プロセスの透明性を高める、多様な人材の誰もが公平性を感じられる福利厚生制度の提供を行うなど、ひとりひとりの社員にとって納得感のある制度を設けることも大切であるといえます。
チーム全体で「多様性を活かす」文化を根付かせる点も、DE&Iコーチングの特徴です。
Diversity(多様性)は、さまざまな属性の人材が組織の中で共存するという点を示しており、この部分が実現できていない組織の場合には、特定の属性の人材を排除したり格差が生じたりすることがあります。しかし、ダイバーシティを実現することによって、多様性を受け入れつつスキルや個性を活かしながら活躍できる企業を目指せます。多様性を活かす文化を根付かせられれば、企業内に多様な個性を持つ人材が共存でき、誰もが自分らしく活躍できる環境を実現できるようになります。
DE&Iコーチングを行った場合、社員個人においては自己理解が深まる点に加えて、自己効力感が高まることが期待できます。この「自己効力感」とは、「自分は目標を達成するために必要となる能力を持っている」と認識することです。簡単にいうと、「自分ならできる」「うまくいく」と思える認知状態ということです。
この自己効力感は、さまざまな場面において前向きに行動するための原動力となります。自己効力感の高まりにより、もし困難な場面に直面した場合でも、自信を持って行動することにつながっていくという効果が期待できます。
また、DE&Iコーチングによって心理的安全性が強化されるという面もあります。チームの中で心理的安全性が強化された場合、社員それぞれが職場の一員として認められていると実感することが可能となり、異論や少数派の意見を排除せずに納得できる話し合いができるようになります。つまりそれぞれがお互いを尊重しつつ、多様な人材が活躍できる環境の構築を行えます。
このような環境を構築できれば、チーム内での信頼関係を築くことができ、協働が促進されるといった効果も期待できます。
多彩なバックグラウンドを持つ人材が意見を積極的に交換できるようになるため、これまでになかった新たな視点やアイデアが生まれやすい状況になります。このことは企業の創造性や革新性を高め、イノベーションの創出がしやすくなります。
さらに現在少子高齢化が進む中においては、企業にとって優秀な人材の確保が非常に重要であるといえます。そこでDE&Iを推進することで、心理的安全性が確保される点に加えて、それぞれの社員に対して公平に成長機会が与えられることになります。この点から社員自身が「この企業にいればなりたい自分になれる」と感じられるようになり、人材確保・人材の定着につながっていきます。さらに、社員ひとりひとりの働きがいを高められるため、定着率の向上にも繋げられます。
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こちらの記事では、「DE&Iコーチング」について、その特徴や期待できる効果などをまとめてきました。
「DE&Iコーチング」とは、多様な人材が安心して力を発揮できる環境を育むことを目指すためのアプローチです。これは、社員の成長に加えて組織の競争力向上を両立させる手段として現在注目されています。コーチングによって公平性・多様性・包括性を実現することが、持続的な組織づくりに寄与するといえます。
「DE&I」は長期的な取り組みとなるため、すぐに効果を実感することは難しいかもしれませんが、取り組みを行っている企業とそうではない企業では、長期的にみると人材確保の面やイノベーションの創出など、さまざまな面で違いが出てきます。この点から、自社の将来を見据えて早い段階から取り組むことがおすすめであるといえます。
傾聴力・共感力・リーダーシップ力
行動科学・心理学に基づいたアプローチで、企業の管理職やチームリーダーが自身の行動や思考を深く見つめ直すプログラムを展開。
傾聴力・共感力・リーダーシップ力などが育つことで、社員の心理的安全性を高め、チームのエンゲージメントが向上します。
フィードバック力・対話力
実務に即した1on1支援と360度フィードバックなどにより、プレイヤー型の管理職が「人を育てる」マネジメントへ意識を転換。
OKR設計やピアセッションを通じて、対話力やフィードバック力“育成に必要なスキル”を実践の中で磨きます。
自己認識力・ビジョン構築
エゴグラム・360度サーベイ・AI対話分析を活用した1on1で、自己認識力とビジョン構築力を強化。
「どう見られているか」「何を大切にしているか」を問い直し、自らビジョンを語り、導くリーダーへの意識変革を支援します。